物を大事にする性格なのか、物がダメになるまで使い切ることが多い。コンパクトなデジタルカメラ(コンデジ)は、近所の家電量販店でワゴンセールになっていた型落ちの FinePix F30 をつい最近まで使っていた。たぶん10年以上使っていたことになる。
【河田一規のデジカメナビ】富士フイルム FinePix F30
https://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj1487b.html
発売当時は価格帯の割に画質がいいと評判は良かったようだ(フジノンレンズとハニカムHRという富士フィルム独自のセンサー)。今となっては解像度(630万画素)の点で最新機種にはまったく敵わないが、確かに悪いカメラではなかった。ただ、いわゆるカメラ好きが使うようなものではないから、シャッターのレスポンスも悪いし、AFも決して速くはない。でも写りはまずまずで、バッテリー性能(メーカー公称値で約580枚)もよかった。
バッテリ性能については、ざくっとした表現だが、10年ほど使う中で、ほとんど使わない期間(半年とか1年近く充電しない)があってもバッテリーは空っぽにならなかった。しかし2年ほど前についにこのバッテリーが駄目になり、それでもちょっと使う用事があったので安物の代替品のバッテリーを買ったら、そいつがまったく駄目で満充電でもすぐに空になってしまう。そうすると、もう F30 の価値はほとんどない。
それ以来写真は iPhone で撮っている。でも写りは悪くないが、カメラとしての使い勝手が非常に悪い。Camera+ というアプリを使っても、思うような操作、設定が難しい。さっと構えて、ピントを合わせ、シャッターを押すという動作がカメラと同じようにはできない。
そんなわけで、今、性能のいいコンデジを物色中だ。
もともとカメラと撮影は好きなので、フィルム時代は Nikon F3 HP と CONTAX T2 を使っていた。業界紙の記者(取材と同時に自分で写真を撮ることが多い)をしていた時は、最初の会社の社長がカメラ好きで取材用に CONTAX の一眼レフがあったりもしたし、次の会社ではデジカメ選びを上司から頼まれたりもした。
なので、いいカメラが欲しい。基本的にスナップシューターなので、一眼レフは大きくて重いし、目立つから、候補に入らない。今(2020年10月現在)候補に挙がっているのが、SONY DSC-RX100 と RX100M3 と RICOH GRⅢ の3機種だ。
コストパフォーマンスでは RX100(初代) が一番だろう。
バランスでは RX100M3 か。
画質と起動の速さでは GRⅢ になる。
RX100 なら4万円ほどで、RX100M3 なら7万円くらい、GRⅢになると10万円越え。値段的にはずいぶんバランスの悪い候補選びだ。
現実的には RX100 なのだろうけれど——なにしろ Mac もそろそろ買い替え時期だし、iPhone もバッテリがヤバイ状態——、GRⅢの画と比べてしまうと、どうしても見劣りがする。同じ SONY の RX1M2 (約30万円)とかと比べると RX100 と RX100M3 は完全に見劣りするけれど、GRⅢは画の方向性は違うが比較しうる画質となる(ちょっと褒め過ぎかもしれないが)。RX100 も他と比較しなければ悪くないのだが……。
画の方向性としては、「解像感の RX100」対「質感の GRⅢ」という感じなのかなぁ。
画質の点でとても気に入っていた CONTAX T2 は Carl Zeiss Sonner F2.8 38mm T* レンズ(それゆえ Zeiss レンズを搭載している RX100 シリーズに惹かれてしまう)とコンパクトで丈夫なチタンボディが最高だったのだが、大きな欠点が二つあった。
それは、起動が遅いことと、AF が遅いことだ。
静物を撮るのには打ってつけだが、動きのある被写体を含むスナップ写真となるとかなりストレスが溜まった。どうしてもタイミングを逃してしまうのだ(一応、マニュアルフォーカスの設定ダイヤルはあったが)。
だからスナップはむしろ Nikon F3 + 50mm or 24mm を使っていた。フィルムを巻き上げて、ピントを合わせて、シャッターボタンを押す——という一連の動作も楽しかった。
あと T2 は 38mm の単焦点というところも一台で済ますには辛かった。
心は GRⅢ 推しなのだが、T2 のネガティブな記憶と価格が押しとどめる。
RX100 の2つは光学ズームがあるし、特に初代の価格は GRⅢ の実に3分の1ほどだぞ、と理性が囁く。
スイッチオフ時のデザインは RX100 の方が好きだが、あのレンズ部分が伸びた状態は好きじゃないので、スイッチオン時は GRⅢ の方が好き。まあ、それは些細な問題だ。
結局は僕が、どう使うのか、どう撮るのか、という問題に尽きるのだと思う。
簡単にいうと、以下のようになる。
◎いつも持ち歩いて、エモーショナルな風景に出会った時、構図が見えた時に反射的に撮る。たぶん、写真を撮るために出歩いたりはしない(取材的なことはある)。
◎記録ではなく、鑑賞価値のある写真を撮りたい(記録目的だとしても画になっていること)。
自分が重要視するスペックを比較してみた。
(カメラ選びで頼りにしているサイト Photo Journal Press より作成)
センサーの画素数は 2000万画素+αと同程度だけど、センサーサイズは GRⅢ が圧倒的に大きくて、画質の良さの一因なのだろう。
起動時間の0.8秒とかの違いは結構大きいんだよな。ウィ、ウィーン、ウィーーーン、という感じで。たとえば人が近く歩いてきて、正面の顔を捉えられるか、横顔になるか、髪の毛だけになるか……チャンスの神様に後ろ髪はないというけどね。
AF の性能は RX100 シリーズの方がいいようだ。GRⅢは動くものや暗いところが苦手みたい(T2 の悪夢が蘇る)。でも、動き回る自分の子供とかペットとかを撮る人とは違うからなぁ。
GRⅢの単焦点については、クラップモードとかいうのがあって、擬似的に 35mm と 50mm の画角で撮影できるそうだ。
あとはお店に行って、手にとって、直感で決めるしかないのかもしれない。
ただ、日によって第一候補が変わっているから厄介だな。
2020年10月15日