『森の図書室、カザルスの夜』の続編!
——森に選ばれた男の、悲しくも愛おしい〝家族〟の物語——
ハルの森

【あらすじ】
ある秋の日、見知らぬ少女が森林気象研究者の貴文の元を訪ねてくる。それは、10年ほど前、東北の山の麓の古びた公民館で一夜の愛を交わした森野木乃香の遺児・遥だった。

自分の子である可能性に怯える一方で、木乃香と過ごしたあの神秘的で濃密な夜の記憶が蘇る。妊娠できなかったはずの木乃香。その手紙に記された〝超自然的な妊娠の経緯〟は、あの夜を共にした貴文だけが理解しうるものだった。

遥と過ごした半日で父親ではない確信は深まるが、女性弁護士の元から児童養護施設に移るという遥を引き取る決意をする。遥が姉のように慕う記憶喪失の美しい娘・春美とも結ばれ、困難を乗り越えて家族となった三人に幸せな日々が訪れる。

妊娠の兆候に喜んだのも束の間、春美は「記憶が戻った」という書き置きを残して姿を消してしまう……。

【目次】

第一章
 一 プロローグ
 二 遺児
 三 ひとつめの手紙
 四 チーズハンバーグといちごパフェ
 五 おかあさんのこと
 六 ふたつめの手紙
第二章
 一 弁護士の沢田さん
 二 坂木さんと少女の門出
 三 タクシードライバーの忠告
 四 森野さんの死
 五 少女の踊りとプロポーズ?
第三章
 一 タクシードライバーの過去
 二 プロポーズ
 三 三上さん夫妻
 四 沢田さんの彼氏
第四章
 一 アルファ・ロメオと不眠症
 二 スキャンダルと墓参りと渡りに船
 三 公民館と新しい生活
第五章
 一 震災と新居と梅の花
 二 妊娠とカザルスと夢
 三 失踪、DNA鑑定
 四 捜索願と豪雨とあの夜の話
第六章
 一 シブタニのばあさまとはるみの伝言
 二 白い森
 三 エピローグ・蝶